「達人プログラマー」のこと

しばらく絶版になってしまっていた「達人プログラマー―システム開発の職人から名匠への道」が、オーム社から「新装版 達人プログラマー 職人から名匠への道」として復刊されました。原著をリスペクトした素晴らしい表紙とコンパクトな判型、訳もより読みやすく見直され、電子書籍としても手に入るようになり、とても価値のある復刊だと感じます。

新装版 達人プログラマー 職人から名匠への道」は、Andrew Hunt と David Thomas によって1999年に書かれた「The Pragmatic Programmer: From Journeyman to Master」の日本語訳です。本書の価値は、その一行目にそのままずばり書かれています。

本書はあなたがより良いプログラマーになるためのお手伝いをするものです。

Andrew Hunt と David Thomas の二人は、何かしらの方法論を押し付けるようなやり方ではなく、実践的なアドバイスとその背景にある考え方の解説を重ねていくことで、プログラマーとしての仕事の仕方を、私たちに伝えてくれます。

ぼく自身、社会人になって3年目くらいの時に本書と出会い、それから「自分がしている仕事が一体何なのか」「どういう仕事をしていきたいのか」「どういうプログラマーでありたいか」といった大事なことを、本書から教えてもらってきました。

17年も前に書かれた本に古典として読む以上の価値があるのか、そう思う人もいるかもしれません。

たしかに、文中に出てくる言語やツール、技術には時代を感じる部分がないわけではありません。しかし、何故という部分は今でもしっかりと大事なことが書かれていますし、新装版では訳註の形で現在の言語やツールのこともしっかりと触れられていて、今の人に届く価値は十分にあると考えます。

本書には、著者の二人から私たちへのメッセージが Tip として文中のさまざまなところに登場します。その中でもっとも大事な Tip は、まえがきに置かれた最初の2つの Tipでしょう。

  • 自らの技術に関心を持つこと
  • あなたの仕事について考えること!

著者の二人はここから出発して、コーディング、設計、テスト、デバッグ、開発環境、チーム、プロジェクト、そしてキャリアのことまで、ちゃんと仕事をするとはどういうことかの全体像を私たちに伝えてくれています。全体像をわかるということは、とても重要です。全体を描いて仕事をしていくことこそが達人への道であることは、本書の中で引用されている「採石場作業者の心得」の通りです。

単に石を切り出す場合でも、常に心に聖堂を思い描かねばならない

私たちの仕事の全体像を、本書くらいコンパクトにわかりやすく、大事なことに絞って伝えてくれている書籍はあまりありません。 新装版をあらためて読んでみて、現在のぼくの立ち位置から未だに新しく発見することもあり、今も活きた書籍であることを強く感じました。

せっかく復刊された新装版が、コレクターアイテムとしてだけではなく、しっかりと今の人たちのもとに届くと良いなと考えています。

新装版 達人プログラマー 職人から名匠への道

新装版 達人プログラマー 職人から名匠への道