拙訳『エラスティックリーダーシップ ―自己組織化チームの育て方』にコミットメント言語 (Commitment Language) というものがでてきます。コミットメント言語とは、簡単にいうと「言質を与える言い方」のことで、本書では「仕事では自分が何を行うかを言質を与える言い方で約束すべきである」という話で、このコミットメント言語というものがでてきます。
具体的にいうと、希望的な物言い(「したいと思います」「しようと思ってます」「やれると思います」)やコミットメントを表明しない言い方(「はやったほうがいいとは思っています」「やらないといけないとは思ってます」)をせず、やることを約束する言葉遣い(「〜します」)をするようにしましょうという話です。
ですが、実はここだけを切り取って読んでしまうと勿体なくて、著者のロイがコミットメント言語の章で伝えたい主旨は、単に言い方だけを変えなさいという話ではありません。本当に大事なのは、そのあとに著者が続けている「自分の制御下にあるものが何かを考えること」にあります。つまり、言質を与える言い方を選ぶことを通して、それぞれのメンバーが「自分が本当に約束できることは何か」を考え、そこから外れた指示、依頼を受けた場合には、自分でスコープを調整したりした上で、約束できることだけを約束できるようになっていかないといけないよね、という話がコミットメント言語の肝になります。
ともすると、「約束させられるための言葉遣い」のように受け取られかねないのですが、そんな風に流通してしまうと切ないなあと思って、僕が訳しながら受け取めていたことを少しだけ書いてみました。
ちなみに、コミットメント言語は「約束の言語 (Language of Commitment) 」としてロイが『Clean Coder プロフェッショナルプログラマへの道』に寄稿した内容が元になっています。ボブおじさんの書籍にロイが寄稿するという、ちょうど『エラスティックリーダーシップ』の逆の形ですね。もし両方の書籍を持っている人がいたら、読み比べてみると面白いかもしれません*1。

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*1:英語であれば http://www.informit.com/articles/article.aspx?p=1715058 から読めます