『急な「売れ」に備える作家のためのサバイバル読本』

「急な売れ」を経験したわけでも、作家でもない。けれども、読んでいるとなんだか「心当たりのある」出来事がたくさん出てきて、胸がキュッとなる。そして、最後の4章で著者の「明日への繋ぎ方」をお裾分けしてもらいながら、自分の「明日への繋ぎ方」を考える。朱野帰子さんの『急な「売れ」に備える作家のためのサバイバル読本』を、僕はそんな風に読みました。

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「急な売れ」や「作家のための」という言葉から、本書を自分とは無関係の本だと思われる方は多いだろうと思います。ですが、本書で語られる「急な売れ」を次のような状況だとイメージしてみたなら、どうでしょう。本書の印象が少し違って見える人はいるのでないでしょうか。

組織(やコミュニティ)内で立場が変わったり能力や名前などを認知されるなどした結果、いろんな人の期待や相談、依頼などが舞い込むようになった状況

本書は、そうした状況(すなわち「急な売れ」)に身を置かれた著者が、自分のキャパシティを超えた仕事量に晒され続けたことですり減ってしまった自分の「職業(profession)」を取り戻す「修復のプロセス」のノンフィクションであり、そうした状況を経た後でも「健やかに仕事をしていく」ためにどうしたらいいかを伝える技術書でもあります。

本書では、その「修復のプロセス」の中で、拙訳『ユニコーン企業のひみつ』の内容が登場します(!!)。

ユニコーン企業のひみつ』は組織の文化や働き方が語られている書籍であるため、このような届き方をしたことには大変びっくりしました。ですが、ジョナサンが『ユニコーン企業のひみつ』に込めたメッセージを思えば、そうしたことも不思議ではないかもしれないな、と改めて思い直しました。

ユニコーン企業のひみつ』は最後、こんな文章で幕を閉じます。

毎朝、仕事に行きたくなるような、全力を尽くしたくなるような、自分らしくいられるような、一日の終わりには満足して家路につけるような、そんな職場づくりにひとりでも多くの人が成功することを願っている - ジョナサン・ラスマセン『ユニコーン企業のひみつ』

ここには、スタートアップであるかとか、ソフトウェア企業であるかとか、組織であるか個人であるかとか、全く関係がないですものね。こうした力強いメッセージがあるからこそ、今回のような届き方が生まれたのかもしれないなあと感じます。

2022年のデブサミで「Ready Player One: 『ユニコーン企業のひみつ』に学べること」というお話をさせていただいた際に、ユニコーン企業のように働けるようになるために重要なパターンとして次の2つを紹介していました。

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朱野帰子さんによる「急な「売れ」に備える作家のためのサバイバル読本」は、まさしくこの2つの実践のアウトプットなのだろうと思います(すごい...!!)。

ジョナサンが『ユニコーン企業のひみつ』に込めたメッセージも詰まった本書が、できるだけたくさんの「本書を必要とする人たち」にどうか届きますように。