新しいプロジェクトのたびに、どうチームを作っていくかということを試行錯誤しています。つい最近やってみて、とても有効性を感じた試みに、チームを始める際にストレングス・ファインダーの診断結果を交換しあうというものがあります。
ストレングス・ファインダーとは、人の持つ34の資質の中から自分の中で優位を占める特徴的な資質5つを診断してくれる診断テストです。
ストレングス・ファインダーの結果は、互いの強みや特性を知るという、自律的なチームを作る上では必須だけれど難易度の高いコミュニケーションをとてもスムーズに行える良いツールだと感じています。しかし、現状はまだあまりそうした使われ方として十分には流通していなそうなので、ここで紹介します。
ストレングス・ファインダーについて
ストレングス・ファインダーとは、企業コンサルや世論調査などを行っているギャラップ社が提供している診断テストです。オンライン上で質問に答えていくことで、自分の中で優位を占める特徴的な資質5つと、その詳細な解説が書かれたPDFレポートが送られてきます。34の資質については、ストレングス・ファインダーを解説した書籍(「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす」など)に詳しい解説がありますが、たとえば以下のようなURLなどでも、どのような資質があるかを参照できます。
http://npo2acchi.com/iko/ストレングス・ファインダーの34の強み/
加えてギャラップ社は、ストレングス・ファインダーで定義している34の資質を、「リーダーシップ」という観点で「実行力」「影響力」「人間関係構築力」「戦略思考力」という4つの領域に分類しています。こちらは書籍だと「ストレングス・リーダーシップ―さあ、リーダーの才能に目覚めよう」に詳細がありますが、以下のURLなどでもその分類を確認できます。
http://ストレングスファインダー.com/entry109.html
自分が持つ5つの資質がこれらの領域のどこに属するかを見ると、ものごとを進める際に自分が強みを発揮する領域がざっくりとわかるようになっています。
具体的なサンプルとして、ぼく自身の結果を以下に示してみます。
2016年6月時点でのぼくの特徴的な資質は、「共感性」「成長促進」「回復志向」「アレンジ」「運命思考」となっていました。ここから、ぼくが強みを発揮するリーダーシップの領域は「実行力」と「人間関係構築力」に偏っていることがわかります。これらは、自己評価とも他者評価ともあっており、信頼できる診断結果だと感じました。
どう使ったか
先日始まったプロジェクトでは、クライアントと一つのチームとなってプロジェクトにあたる必要がありました。このプロジェクトはクライアント組織の業務改善がミッションとなっており、複数部署を横断して組織の進みたい方向・メッセージを正しく伝え、浸透させていく必要が生じると感じていて、そのためにプロジェクトのメンバーに「影響力」の強みを持つ人材が必要だと考えていました(前述の通り、ぼく自身はそこはあまり得意なフィールドではなかったので、より必要性を感じていました)。
プロジェクトのキックオフをセットアップするにあたって、アジェンダの一つに「得意なこと・苦手なこと・期待することなどを交換する」という議題が上がっていたのですが、まだ関係が十分に作れていないクライアント側のメンバーとどうしたらスムーズにそれらを行えるかを考えた時に、試しに事前にお互いのストレングス・ファインダーを交換するということを提案し、実際にそれで会話をしてみました(ここでこれを試せたのは、クライアント側のメンバーがストレングス・ファインダーを認知している気配を感じる機会があったということがあります)。
その結果、相手側に「影響力」「戦略的思考力」の強みがあることがわかり、まだ十分に会話をしていない段階にもかかわらず、どのように役割分担して動くチームになりそうかという具体的なイメージなどをある程度描くことができました。また、お互いの結果は、過去のエピソードなどを紹介しあう触媒ともなっており、とても円滑に「得意なこと・苦手なこと・期待することなどを交換する」という活動を進めることができました。
このプロジェクトは現在も進行中ですが、当初の想像通りのチームの形となっていると感じています。
開発チームのチームビルディングにストレングス・ファインダーを活用する
こうした、お互いの強みをチームを始める際に交換しあうことの大切さは、多くの書籍で触れられています。
たとえば、「アジャイルサムライ−達人開発者への道−」には「プロジェクトを始めるときにこんな質問をしてみたらどうだろう?」(P34)というコラムがあり、そこではプロジェクトを始めるときにチームメンバー同士で以下のような質問をしあうことが提案されています。
- 自分は何が得意なのか?
- 自分はどうやって貢献するつもりか?
- 自分が大切に思う価値は何か?
- チームメンバーは自分にどんな成果を期待してると思うか?
また、「SCRUM BOOT CAMP THE BOOK」では、「Scene No22. さまざまな状況に対応する この作業は苦手です…」にある「協力して乗り越えていこう!」という節で以下のように書かれています。
ここで大事なのは 、開発チ ームとしていろんなことができるかどうかだ 。それはスキルに限った話じゃない 。考え方や経験 、どういう仕事のやり方が得意かってことも大事なんだ 。…(略)… お互いのそうした性格や得意不得意まで知っていれば 、開発チ ームはさまざまな状況を乗り越えていけるんだ 。
ですが、キックオフくらいの段階でこうした内容を「会話」だけでうまく交換しあうのは、実際にはとても難しいことだと考えます。
ここに関して、ぼく自身はあまりいいアイディアを持っていませんでした。ですが、今回ストレングス・ファインダーの診断結果を交換しあうということをしてみて、これはチームに自分自身の情報を安価で伝えるとても良いプラクティスだと感じました。会話をすることなく自身の強みなどをある程度の正確性を持って相手に伝えられるということももちろんですが、会話の際にエピソードを引っ張り出すための引き出しとしても、とても便利なツールだと感じています。また、既にあるチームの形を確認し合うのに使ってみても良いかもしれません。
これからチーム・ビルドしようという方の参考になると嬉しいです。 機会があれば、ぜひ試してみてください。
補足1: スキルマップとの併用
「SCRUM BOOT CAMP THE BOOK」では、開発チ ームとしていろんなことができるかどうかを事前に確認するためのプラクティスとして、「スキルマップの作成」が紹介されています。プロジェクトに必要なスキルや知識を列挙し、それを開発メンバーがどれくらいカバーできているかを可視化することで、メンバーの得意なこと、苦手なことを確認し合おうというプラクティスです。
ストレングス・ファインダーの診断結果から見えてくるのは「行動の傾向」だけなので、実際に開発チームのフォーメーションを考える際には、こちらのプラティスと併用すると、開発チームが集まった時点で「このチームがどういうチームで、何ができそうか」という情報をそこそこの精度で見通すことができるだろうと考えます。
補足2: 他のやり方?
以前聞いた中で、ここを上手にやられているなあと思った例としては、リコーの山本陽平さんが「リコーUCSの開発をリーンスタートアップ的視点でふりかえる 」という発表の際にお話されていた「チームで大貧民をやってお互いの性格を把握する」というプラクティスがあります。
他にも、このあたりのチーム・ビルドをこうしたプラクティスでやっているよ、というやり方があれば是非知りたいです。
補足3: ストレングス・ファインダーを受けるには?
診断には15ドルほどかかりますが、前述の書籍に付属しているアクセスコードを使って診断を受けることも可能です。オンラインでテスト資格を購入する際には、以下のURLからアクセスします(書籍のアクセスコードを使う際のURLは別らしいので注意が必要です)。
https://www.gallupstrengthscenter.com/Purchase/ja-JP/
ストレングス・リーダーシップ―さあ、リーダーの才能に目覚めよう
- 作者: トム・ラス,バリー・コンチー,田口俊樹,加藤万里子
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2013/03/23
- メディア: 単行本
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